ネット・レーベルの“森”散策:アンビエントを中心に
ここ数週間、暇をみつけては Internet Archive に置かれているネット・レーベルのセクション、Netlabels で、さまざまなミュージシャン、多種多様なジャンルの音楽を聴き漁っていた。
ストリーミング放送を聴き始めて、インターネット上で音源ファイル(現時点では mp3 フォーマットがまだまだ主流のようだ)のかたちで音楽を公開しているこうしたレーベルがあることを、遅まきながら漠然と知るようになった。その後、時々はレーベルのウェブサイトを覗いてサンプルを聴いてみたりはしていたのだが、最近になってようやく集中的に探してみようと思い立ったのは、愛聴しているアンビエント音楽ストリーム、Ambience for the Masses(→関連拙稿)で流れた印象的な曲のいくつかについて検索してみたのがきっかけだった。
アルバム単位で出来が良さそうであればCDを注文しようと思って、気になった曲の曲名とミュージシャンの名前を頼りに探すと、何人かのミュージシャンはCDでのリリースとともに、あるいは音盤でのリリース歴はまったく持たずに、ネット・レーベルで自身の音楽を公開している。曲によっては、商業的に流通している名前の売れたミュージシャンのものと較べても出来映えの点でまったく遜色ない。
ひとたびこうして足掛かりを得れば、あとは読書の場合と同じく、芋蔓式に興味を惹かれる対象が拡がっていく。結果的に次から次へと聴いてみることになった。問題になるのは、丁寧に聴き込もうとすると必要になる時間が相当量にのぼるという点だ。Internet Archive の Netlabels セクションに在る音源に限っても、計算してみたことはないが合計すれば軽く数千時間分を超えるのではないか。これ以外にも、レーベル独自の公式サイトやミュージシャン自身のウェブサイトで公開されている音源がある。ネット・レーベルも、普通のレコード・レーベル同様に何らかの音楽ジャンルやサブ・ジャンルに特化して特色を打ち出そうとしているところが多いので、聴く側の好みによって大まかな取捨選択は可能だ。それでも、一種の“コレクター心理”が働くのか、ジャンルで判断して切り捨ててしまったレーベルやミュージシャンのなかに優れた作品が隠されていないともかぎらない……ような気がしてくる。
当然、こういう場合にも先達はおり、しかも優れた選択眼で秀作を“発掘”しておられるウェブサイトがある。私自身は、とくにアンビエント音楽に括れる分野を得意とするネット・レーベルやそこで活躍するミュージシャンに関して、以下の2つのサイトの記事を大変参考にさせていただいた。記して感謝します(いずれも英文、ウェブログ形式):
Marc Weidenbaum さんの disquiet.com
Alex Young さんの Milleu
上記いずれのサイトも、ネット・レーベルの紹介にとどまらず、特定のミュージシャンや作品を深く掘り下げ、また直接ミュージシャンへのインタヴュウ(電子メール経由でだろう)を通じて、彼らが創る音楽の背景を探るなど、読み応えのある記事が多数公開されている。
また、ネット・レーベルおよびネットを通じて自作を公開しているミュージシャンのディレクトリもある。私が気づいたかぎりでは、Numina: Netlabel Yellowpages および同 Netartist Whitepages が、(おそらく網羅的ではないものの)相当数を集めて、わかりやすい表形式にまとめている。
さて、幸いにも Webjay(→関連拙稿)では、ネット上で公開されている音源(へのリンク)を集めて、計算機上の各種音源プレイヤー・ソフトで使えるプレイリストを比較的簡単に作成することができる。これまで自分で実際に聴いてみて気に入った曲を集めたものを2種類、備忘も兼ねて新たに作ってみた:
私は上述のとおりごく最近になってネット・レーベルを渉猟し始めたばかりなので、これらのリストにはすでにこの世界で名前の通った人たちの曲が多数含まれていて、事情通からすれば噴飯物の安直な選曲になっているかもしれない。その際は何卒ご容赦ください。
1は、レーベル横断的にさまざまなアルバム/ミュージシャンから選んでいる。ほとんどがビートのないドローン主体のアンビエント音楽で、副題に「(Brian) Eno の定義に近い、アンビエント曲コレクション……」としたように、聴き流して無視することもでき、集中して聴いても聴き応えがあると私が感じたものを集めてみた。ネット・レーベルでは、アンビエントと呼んでもいい曲が、これまで私が聴いてみたかぎりでもひじょうに数多く公開されている。推測するに、全般にこの分野の音楽への需要が限定的で、商業ベースでの配布には障害が多いせいだろうか。音盤製作・流通などにかかるコストをほとんど丸ごと省くことができるネット・レーベルは、この点で圧倒的に有利だ。それにしても水準の高いものが多い。副題のとおり、今後とも徐々に気に入ったものを追加していく予定。曲の排列も随時あれこれいじってみて、できるだけ滑らかな流れを形成するよう、試行錯誤している段階です。
2は、現時点での私の芋蔓式探索のかなり末端に位置するところで出遭った Sutemos という名前の、バルト海沿岸・リトアニアに本拠を置くネット・レーベル(および E-zine)でリリースされた曲から選んだ。このレーベルは、ビートがあるいわゆるエレクトロニカという感じの音楽が主力のようで、現在アルバム・EP双方合わせて9“枚”の作品を公開している。この傾向の音楽は、概してせわしない印象を受けがちであまり好きではないとこれまで思っていた。しかし実際に聴いてみると、とくにこのレーベル収録のものは、いわゆる“音数(おとかず)”が多いが細部にまで十分に神経が行き届いており、落ち着いた雰囲気をもつ優れた曲が目白押しだった。自分の嗜好に従ってできるだけ厳選してみたが、このプレイリストに入れなかったものにも佳曲は多い。
私と同様に漠然とでも興味をお持ちになった方々にとって、この拙作プレイリストが、総体としてのネット・レーベル(と、ネット上で自作を公開しているミュージシャン)がもつ広大な世界探求のための一助になれば、望外の喜びです。上記2つにリストアップされたものは、ほぼ全曲がクリエイティブ・コモンズの非営利・帰属明記(または派生禁止)・同一条件許諾の条件でライセンスされている。
なお以前にも書きましたが、Webjay プレイリストの利用方法は、上記プレイリストのページへ飛んでいただくと、ページ左上に大き目の矢印のついたボタンがあります。そのボタンすぐ右横のプルダウン・リストからお使いの音源プレイヤー・ソフトを選択してボタンを押すと、プレイリストがプレイヤーにダウンロードされ、演奏が始まります。ただし、上記2つのリストの音源は、ほとんどが Internet Archive に置かれているため、同サイトのサーバの稼動状況によっては一時的に不達で聴けない場合もあるかもしれません。また、プレイリストを置いてある Webjay のサーバ自体も時々重いことがあります。