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Tarentel ライヴ@渋谷 Club Quattro

昨夜(05年1月22日)、標記のライヴへ出かけた。

帰り道、何年ぶりにクラブ・デイトでバンドを聴いたか思い出そうとしたが、結局はっきりしない。朧ろげな記憶では、どうやら Sylvian/Fripp の1992年、芝浦方面にあったクラブなのか倉庫だったのかよくわからないヴェニュウ(davidsylvian.net記録によれば「テラダ倉庫(Terada Warehouse, T-33, Tokyo)」となっている)での演奏を聴きに行った時以来らしい。そうすると約13年ぶりということになる。我ながら自分のものぐさ加減、出不精のひどさに呆れる。

チケットの入手から何からすべてが手間だ、クラブでのライヴは立ち席で疲れる、ただでさえお洒落に縁がないのでろくに着ていく服もない、一時期よく一緒に行っていた(というよりも、私を随時引き廻し、いつも刺戟的なライヴに連れていってくれた)友人ともいつしかお互いに都合がつかなくなり、誰と連れ立って聴きに行く当てもない……等々、ネガティヴな理由を数え上げては足が遠のいていた。そんな、もう完全に情けない典型的オッサンに成り果てた私が、十数年ぶりに一念発起し(大仰です……が、自分の実感としてはそれに近い)、このバンドを生でどうしても聴きたいと思ったのには、それなりに訳があった。

Tarentel の音(楽)

Tarentel は、米国西海岸サン・フランシスコを拠点に活動しているバンドだ。昨年(2004年)、元 Talk Talk の Mark Hollis のソロ(アルバムのリリースそのものは1998年)と、そこからのつながりで Bark Psychosis の10年ぶりの新譜 ///CODENAME: dustsucker (2004) および旧作 HEX (1994) をたまたま聴いて非常に気に入って以来(→何度も挙げて恐縮ですが、関連拙稿)、いわゆる“ポスト・ロック”に属するとされるバンドが創るさまざまな音楽に興味を惹かれた。試聴できる音源があるものは探して聴き、ウェブ上の各所に公開されているアルバム・レヴュウなども参考にしつつ、気に入ったバンドはできるだけCDを入手して聴いた。Tarentel も、そうやってあれこれつまみ食いしているうちに出遭ったバンドのひとつだった。

彼らはすでにオリジナル・アルバムを4枚リリースしている。うち1枚(Mort Aux Vaches (2002))は1000枚限定で、私がこのバンドのことを知った頃にはとうに売り切れていたため残念ながら手許にないが、他の3枚、From Bone to Satellite (1999)・The Order of Things (2001)・We Move through Weather (2004)、加えてシングル盤のコンピレイション Ephemera | Singles 99-2000 (2002) は、昨年後半の時点で比較的容易に買うことができた。

どのアルバムも、正直なところ掴み所がない。基本的には(生)ドラムにベースとギター(後2者は電化)から成る編成で、そこにシンセサイザ類や自然音(found sound, field recordings)を用いたテープ・エフェクト、またアコースティック・ギターや同じくアコースティックのピアノ・管楽器・弦などが加わることもある。こういう楽器編成は、たぶん“ポスト・ロック”として(都合よく)括られてきた多くのバンドに共通しているものだ。一方で、リリースされたCDを通して聴くかぎり Tarentel の音楽に「掴み所がない」と私が感じたのは、これら“ポスト・ロック”のものも含めたロック・バンドの曲のごく常識的なフォーマット――メロディがありリフがあり、そこを抑えここで盛り上がり終わる……等々――が、Tarentel の場合は一聴即座に判然とせず、陽にはほとんど出ていないところにある気がする。だからどのアルバムも、ごく限られた数の“わかりやすい”、“曲らしい”曲を除いて、大半が漫然と聴いているだけでは、あるいは数回程度聴いただけでは、こちらに訴えかけてくるところが少ない。

こういうふうに書くとまったく褒めていないに等しいが、実は彼らのアルバムを入手してCDで聴くに先立ち、私は Epitonic.comTarentel の頁、さらにバンド公式サイト「mp3s」で聴くことができる彼らのライヴ音源を聴いていた。これが――録音されたものだという点ではCDの音と本来は変わりないはずにもかかわらず――まことにスリリングで、緊迫感とインプロヴィゼイションのおもしろみに満ち満ちた、迫力のある演奏だったのだ。スタジオ制作のアルバムを聴いてから改めてこれらのライヴ演奏を聴き返してみると、掴み所のなさ加減ではライヴ演奏・CD収録曲ともにさほどの差はないものの、いったい何が違うのか、ライヴでは彼らの曲がもつ、どこへ行くのか何を目指しているのかわからない様がそのままスリルと緊張感に変容して、聴き手の関心を引っ張り惹きつける。また、ライヴであればごまかしがきかないバンド各メンバーの演奏伎倆も非常に手堅く達者で、随所でトリオで出している音とは思えない厚みを感じさせる。「このバンドはおそらく生で聴かなければ絶対に真の魅力を味わえない」、かくして十数年ぶりにクラブでのライヴに出かけることになった。

昨夜の演奏

昨夜の Tarentel ライヴは、今回の小規模な日本ツアー(東京2回、京都・大阪各1回)の皮切りで、world's end girlfriend と(Tarentel に同じく Temporary Residence レーベルからアルバムをリリースしている日本のバンド)MONO(リンク先はそれぞれの公式サイト)との間に挟まれて行なわれた。ステージのセットアップ時点でフィルム投影用のスクリーンが舞台奥に下ろされ、ギター・ベース・ドラムセットのほかにクラリネット(? だと思うのだが当方無知のせいで未詳)やベル、多数のシンセサイザ、ターンテーブル一式、コンピュータなどが用意された。

〔05年1月27日追記〕 上で「クラリネット」としているが、出していた音の音域と楽器の大きさ(明らかに“普通の”クラリネットより長い)とを考えれば、おそらくバス・クラリネットだったのではないかと思われる。We Move through Weather セッションでは、今回は(たぶん)来日していない Steve Dye 名義でバス・クラリネットが演奏に用いられた旨、CDのライナーにクレジットがある。〔05年1月27日追記終〕

シンセサイザからのドローンが鳴り、徐々に音量が上げられて場内の照明が落とされ、主要メンバーの一人 Jefre が短くMCを入れてから演奏が始まる。映写されたフィルムは全体が主にクリーム色がかった淡い色合いで、金属製フェンスやマンホールや排水溝の金網など格子状のもの、高層ビルの壁面に規則正しく並んだ無数の窓、浜辺の波や水溜り、落ち葉、編隊を組んで飛ぶ戦闘機などが、短いカットでブレながら次々と流れる。演奏は――公演終了後、Jefre とほんの二言三言だけだが話せる機会があったので訊いたところ、「今夜のは全部インプロヴィゼイション」とのことだった――約30分弱くらい(? 計時していないので甚だ不正確)のもの1曲。Jefre が吹く管の音をその場でサンプリングして(?)ループさせたり、ギターの Danny がフィードバック音を随時入れて音に厚みをつけ、またおそらくラップトップから出していると思われるグリッチ音が多用されていた。演奏の終盤、来日してから録音したものなのか、日本の視覚障害歩行者向け音声信号機の音(「かごめかごめ……」の安っぽい電子音と女声アナウンス)も使用された。

率直に言って、昨夜の演奏には物足りなさが残った。せっかくドラマー(最新アルバム We Move through Weather 制作セッションから参加の Jim Redd)がいるのに、彼はほとんど本格的に叩くことがなく、アクセントのようなパーカッションを加えることにほぼ徹していた。3バンド出演ということで時間的な制約もあったのだろうが、少なくともあと2、30分あるいはもう1、2曲の演奏を聴いてみたかった。聴いている間、彼らの演奏の方向が定まりかけ、何かが姿を現して“見えて”きそうだと感じた瞬間が幾度か訪れたのも、よけいに残念な印象を強めている。また、これは全くの私の臆測でさすがに Jefre に直接尋ねることはできなかったが、彼ら自身も昨夜の演奏にはあまり満足していなかったような気がする。

アモルファスであることの強さ/弱さ

上掲 Epitonic のバンド解説冒頭に書いてある「amorphous(不定形)」("Tarentel's sense of place is both concrete and amorphous, ...")というのは、最初にこの頁から彼らのライヴ音源を聴いてみた時に「うまいこと言うな」と思った形容だ。そこで「場所(の感覚)」と言われているものは、思い切り意訳してしまえばバンドとしての“立ち位置”のようなものを意味しているだろう。昨夜の演奏を聴いて、まことに適切な表現だという感をさらに深くした。

またもや大げさになってしまうが、アモルファスであり続けること、特定の型に嵌らないこと、パターンから身を躱(かわ)し続けることは、その対極に位置するとも言える、確固として揺るぎない斉合性を隅々まで備えた系(system)を作り上げるのと同様、大変な力を要する業(わざ)だろう。そして Tarentel はバンドとして、おそらく意識的にアモルファスであることを目指している。だが、アモルファスであり続けると自ら択んだための力業であるが故に、いざとなれば寄りかかることができる系がないぶん、その演奏は時によってはどこへも到達しない。昨夜のライヴも、決して水準(何らかの“水準”が、こうしたフリー・フォームの音楽にあると仮定して)以下のひどい出来だったという意味ではないが、残念ながらそうした不完全燃焼のひとつだった気がする。

それでも、Tarentel に続いて熱演した MONO の、ほぼ100%予定調和的と言うべき、緊張と弛緩とがそれこそ寄せては引く波のように確実に交互に訪れる演奏を聴きながら、Tarentel は今夜はハズレだったかもしれないが、またどこかで凄い演奏をきっとするに違いないと、私は勝手に確信していた。本国では活発にライヴを行なっている彼らのそうした入神の演奏を、本拠地から遠く離れ回数も限られた来日公演で耳にすることはむずかしいかもしれない。彼らの音に出遭ってから日が浅いにもかかわらず、今回のツアーもできれば全部“追っかけ”でついて廻りたいくらい、個人的には思い入れができてしまったバンドだが、現実にはさすがにそれも無理だ。あとは、今後の彼らがスタジオ制作盤で、あるいは厳選したライヴ演奏を集めたライヴ盤で、潜在的なポテンシャルを完全に開花させた成果を出してくれるのを待ちたい。

念のため、上記で MONO の演奏について貶す意図はない。MONO のこれまでのアルバムに共通する、瑞々しさを失わないリリシズムは、個人的にはけっこう好きだ。上で言いたいのは、今回の(あるいは昨年の北米ツアーでの)Tarentel と MONO とのカップリングは、図らずも(なのか意図的なのか?)この2つのバンドの特質を対照的に明らかにする結果をもたらしているのではないか、それを私は昨夜強く感じた、ということです。

それにしてもこの MONO、それに私は昨夜初めて聴いた world's end girlfriend、そして出番らしい出番は少なかったものの Tarentel のドラマー、いずれも非常に切れ味がよかった。堪能しました。

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本文で示したものも含め、バンドに関するウェブ上リソース(いずれも英文):

  • Tarentel 公式サイト。近況・ディスコグラフィ・mp3音源サンプル(多数掲載、ほとんどが全曲収録で、ビットレイトも128kbps)・通信販売(PayPal で決済可能)の各頁に分かれている。この公式サイトのディスコグラフィ頁には、制作参加ミュージシャンが列挙されている。バンドのメール担当は、私がやりとりしたかぎりでは Jefre さんのようだ。

  • Tarentel (非公式ファン)サイト。こちらのディスコグラフィには、各曲の初出などが詳しく注記されている。これ以外に、各誌紙に掲載されたアルバム・レヴュウやバンド・メンバーへのインタヴュウが収集・転記してあり、またステージ・フォトなども見ることができる。まだサイトの改修が継続中のようで、一部のリンクが死んでいる。

  • Epitonic.com 所掲、「Tarentel」の項。この Epitonic は多数の異色バンド・ミュージシャン(「20世紀の作曲家」というカテゴリも立ててある)をサンプル音源とともに紹介していて、随分参考にさせてもらっている。最近更新がほとんどないようなのは残念。Tarentel の音源では、同サイト exclusive とあるライヴ音源がかなりの出来。

  • 上掲非公式ファン・サイトからもリンクが張ってあるので、ここでも掲げておく。フランス、在パリのFM局(または番組? 未詳)Helter Skelter が2001年6月10日、ベルギー・Diksmude のクラブ 4AD(!) で収録したライヴ。詳細は同局サイト内、「Sessions --> Tarentel」参照。この2001年欧州ツアーの際は5人編成だったようだ。

  • Tarentel の主要アルバムをリリースしている Temporary Residence レーベル、公式サイト。バンド紹介下段から、あるいは「Catalogue」頁から、同レーベル発売の各アルバム紹介へ。このレーベルに関しては、Splendid(ezine)「label conscious --> Temporary Residence Limited」にも紹介があり、そのなかで「自社契約ミュージシャンの誰がツアー中に迷子になりそうか」「Tarentel はいつもショウに数時間遅れてくるが、彼らが迷子になっているのか、ただ単にのろま(slow)なのかはわからない」。昨夜はリハーサルが押した由で開場が遅れたが、数時間の遅刻はなかったです(笑)。

  • 以下、主なアルバム・レヴュウ(備忘)。これと一部重複し、多数が上掲の非公式ファン・サイトに収録されている:

    • fakejazz.com 所掲、Tarentel を検索語にした結果。なお fakejazz は05年1月17日付51号をもってほぼ定期的だった刊行を休止、サイトは大幅にリニューアル予定の由。同号「The List 2004」(昨年のベスト盤選定)には Tarentel の Jefre も参加していて、Albert Ayler の9枚組CDボックス・セットを強力に推している。

    • Stylus 誌所掲、限定盤を除く1枚目2枚目3枚目アルバム評。いずれも厳しいが、これらのレヴュウの執筆者と私が感じている Tarentel スタジオ制作盤へのもどかしさは、たぶん同質のものだ。

    • MusicEmission 所掲、限定1000枚盤と The Order of Things とを除く3枚のアルバム評

    • Splendid 所掲、We Move through Weather

  • 今日の会場では、まもなく(1月26日予定とのこと)来日記念盤として国内発売される Paper White / Big Black Square を先行販売していた(ので、ろくに中身を確認しないままつい買ってきてしまった)。これは、バンド公式サイトでアナウンスされている、今年3月頃に Temporary Residence からリリース予定の2枚のCDEPをカップリングして1枚にまとめたもののようだ。日本盤のレーベル humanhighway records 公式サイト参照。今回の MONO とのツアー・スケジュールも、同サイト「News」頁に詳しい。

  • 〔05年3月8日追記〕 検索エンジン経由で。この1月22日の演奏、始まりの Jefre による短いMCから約10分30秒間ほどを、ステージ上の様子をとらえた映像とともにオン・ディマンドのストリーミングで視聴することができる。当日の会場だった Club Quattro のサイト net-flyer.com トップ頁から Stream --> Live Stream --> TARENTEL (URL: http://www.net-flyer.tv/stream/livestream/detail.cfm?STRID=424&CHECK=N) にて。上述のとおりフィルムを映写していたため照明がほとんど落とされていて画面は全般に暗いが、ステージ奥スクリーンに映るその映像も一部見られる。

    上掲ページの記述によれば、この日の演奏は(私は本文で「約30分弱くらい(? 計時していないので甚だ不正確)」と書いたが)「インプロヴァイズによる1曲(40分弱)のみ」とある。〔05年3月8日追記終〕

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