靭い声:Rachael Yamagata "Happenstance"
ストリーミングを聴き始めてから国内FM放送をほとんど聴かなくなったせいで直接は知らないが、Rachael Yamagata という若い女性シンガー・ソングライターは、どうやら最近さかんにエア・プレイされているらしい。今月初旬にプロモーションのため来日していたそうだ。ご本人の日記(公式サイト(要Flash)の「Journal」04年9月13日付)によると「3つの地震と台風ひとつ」に襲われる間、「驚くほど効率的に組まれた」スケジュールに従って日本各地のFM局・CDショップでインタヴュウや店頭ライヴなどをこなした由。もうちょっと早く知っていれば、生で数曲聴く機会を得られたかもしれない。
標題に掲げた Happenstance (2004)は、アルバム全体としてまずまずの出来映えだと思う。きわめてまっとうな(アメリカン・)ポップス。ソロ・デビュウ以前は、米国シカゴで活動するブラック・ミュージックの影響を色濃く受けたというバンドでピアノやコーラスを担当していたそうだが、真っ黒という印象は、このアルバムを聴くかぎりではさほど強く受けない。何曲かは共作だし(さらにそのうちの何曲かは歌詞も?)、編曲の面でもスライド・ギターや管楽器、さらにはチェロを使ったりして、通して全篇を聴くと、さまざまな可能性を探ろうとした感じがする。それが“為にするヴァラエティ取り揃え”になっていないのは、プロデューサの手腕か。ただし基本的には、独学だというピアノでリフを作りながら書いたな、という曲が多い。
歌詞はほとんどがラヴ・ソング。「私は自分の道を行く、いい結果が出ることを祈りながら/私たちは背中を軽く叩き合って、二人のためにベストは尽くしたと口にすることもできる/もし私たちのどちらかが成功したら/別れたことをせいぜい悔いて/愛情は決してなくならないと語り合ってもいい/でもあなたも私もわかっている/私が去り、あなたがそこに留まったわけを」と歌う、11曲目のピアノ・バラード "Reason Why" は、なかなかいい。
ちょっと掠れた太めの声に、個人的にかなり魅かれた。この声は靭(つよ)い。自ら書いている歌詞にも似た側面が垣間見られるように、なよなよしておらず一本芯が通っている。あとは曲と詞でどこまで独自の世界を創れるか。まだオリジナル・アルバム1枚では早計かもしれないが、このヴォーカルさえあれば今後に期待できる気がする。低音域を印象的に使うピアノ伴奏も個人的に好きだが、最近になってギターで曲を書き始めたとのこと。
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お目汚ししてしまったとおり、Rachael Yamagata の歌を聴いて思ったことを全然うまく書けていない。彼女の音楽がもつ魅力をはるかに広いパースペクティヴのもとで紹介しており、個人的には自分が最初に彼女のことを知ったきっかけ、Oliver Wang さんによるウェブログ soul sides、04年9月3日付エントリ「MOMENTS WITH RACHAEL」(英文)をぜひご一読ください。
なお Oliver Wang さんのこのウェブログでは、記事投稿から10日間はとり上げたミュージシャンの曲をいくつか mp3 ファイルで試聴可能だが、拙記事が遅れたせいで Yamagata の音源サンプルについては既に失効。上掲記事冒頭で紹介されている Rachael Yamagata EP (2003) 所収 "Collide" を聴いて私はCDを買った。肝腎の EP はしかし発注先で入荷が遅れ未着。
以下は、検索エンジンで見たもののうち、主なリソース:
上掲公式サイトでは、音質はよくないものの数曲を「Listen」にてフル試聴できる。歌詞は全曲掲載。同頁右下には「hear rarities and b-sides」で5曲(本稿執筆時)の演奏が聴けるページへのリンクもある。
「Press」を見ると、ティーン向け雑誌から男性誌まで、実にさまざまなメディアに露出している。グラビア込みで記事になっていることが多く、ご苦労なことだ。Chicago Tribune 紙の04年6月16日付インタヴュウ「Star gazing: Chicago singer Rachael Yamagata sets her sights high」(Matt McGuire さん執筆)にもあるが、本国アメリカで Yamagata と契約したレーベルは相当力を入れて売り込んでいるようだ。
おそらくプレス向け資料を翻訳してそのまま使ったものだろうが、日本盤発売元の当該ページには、自筆バイオグラフィ・自作全曲コメント・参加ミュージシャンのリストが掲載されている。自筆バイオグラフィに関しては、Auralgasms の Rachael Yamagata 頁、「Biography」所掲のものが原文と思われる(英文は一部段落が錯綜している)。Auralgasms にある mp3 サンプルは部分のみだが、音質は公式サイトのものより良好。
なお、私が購入したのは米国盤で13曲(+ 隠しトラック1曲)収録。いっぽう本国から3カ月遅れの9月8日発売日本盤は例のごとくボーナス・トラック付きで、一部 Rachael Yamagata EP から採っているようだ。国内盤発売元が "Ode To..." としている曲が隠しトラックか。
Auralgasms の「Links」頁で紹介されている、写真家 Jasper E Coolidge さんの jenyk.com 内、2003年9月のライヴ・フォト。
上でふれた「ギターで作曲するようになって」云々は、山野楽器のウェブサイト内「Jam Spot」、同本店でのインタヴュウにおける発言。