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mp3 ストリーミング:Whole Wheat Radio

Whole Wheat Radio Logo

ひじょうに興味深くかつ楽しいストリーミング放送局をみつけた。Whole Wheat Radio(リンク先は同局公式サイト)、無理やり訳して“全粒小麦ラジオ”。在米国アラスカ州 Talkeetna(リンク先は MSN Map の当該地。画面左上の目盛で上から3つめくらいにズームアウトすると大体の見当がつく。拡大・縮小には要 JavaScript) という、Anchorage の北方、直線距離でおそらく150kmくらいに位置している小さな村(季節変動が激しいが人口約400人とのこと)で番組を制作している。局スタジオの写真がこちら(ページ中ほど右側)に掲げられている。林の中の文字通りの小屋という感じだ。

「全粒小麦 whole wheat」というのは、英語でも日本語でも健康食品などによく見かける言葉だ。自然保護や健康志向といった或る種のイデオロギー(というと大仰か)のにおいがついている。まあこれは私個人のバイアスかもしれないが、「Photos」をご覧いただければ、おそらくふむふむ(笑)と思われるのではないか。私は世代的にその残滓のようなものしか直接には知らないが、1960年代のヒッピー・ムーヴメントやヴェトナム反戦などを思い起こさせる風貌の人たちが写っている。流れる音楽も、大手レコード・レーベルとは契約しない、独立系ミュージシャンやバンドのもの。多くはアコースティックでギター一本、あるいはジャム・バンドのようだ。

ここに写っている男性が、局を主宰している Jim Kloss さん。女性は Jim さんの「ベター・ハーフ」(これも懐かしい言葉だ)Esther Golton さん。彼女はシンガー・ソングライターで、アパラチアン・ダルシマー奏者(ダルシマーという楽器についてはヤマハのおんがくういくり中「おんがく世界めぐり」、柘植元一さん執筆の「アパラチアン・ダルシマー―― 北アメリカのコト」など参照。こういう楽器があること自体、私は知りませんでした)の由。お二人の声は同局の番組中随所に流れる。

ところが一見してヒッピーのなれの果て(失礼)かと見紛うようなお二人が運営するこの放送局、きわめて先進的なシステムを誇っている。公式サイトの「How it Works」(仕組み)頁には以下のように書かれている(一部を省略のうえ意訳):

番組は生放送……のようなものだ。Whole Wheat Radio は一種の逆説になっている:大地に根ざした局だが、テクノロジに甚だ依存している。放送はほぼ完全に自動化されていて、突発的な事態(計算機のクラッシュなど)発生時を除けば人手はまったく不要だ。

流される音楽は放送前にすべてプログラムされている。しかしこれはリスナーからのリクエストによっていつでもオーヴァライドすることが可能。放送中のほとんどの時間には誰か人間が一人、背後でうろちょろしている。この人間は Jim Kloss という名前で、DJキャップを被り、番組に随時、人間味を加えている。

〔引用者注:ちなみにこのストリーミングは24時間放送、年中無休。「Jim はいつ眠るのか?」という問答が「FAQ」に出ている。回答は「完全オートメなので寝たいときに寝てるよ」(笑)とのこと〕

私はつい数日前にこの局に行き当たった。最初に訪れたところが Jim さんのウェブログで、そこからリンクをたどってこちらのページへ飛び、初めてストリーミング局であることに気づいた。「Guided Tour」のページをご覧いただくとわかるように、このサイトには「Control Console」というリスナー各々専用のページが設けられている。いま(および以前)流れた音楽のプレイリスト、同局サイトにログインしているリスナーのリスト(プロフィール閲覧可能)、リクエスト・ボタン、ログインしているリスナーと番組の送り手側の Jim さん/Esther さん、それに複数の“EJ”(Electronic DJ)という人工無能チャット・ロボットとチャットができるチャット画面などで盛り沢山だ。

最初はストリーミングを聴きながらしばらくゲストで覗いていたのだが、あまりに興味深いのでプロフィールを作ってチャットに参加してみた。ちょうど Jim さんが起きている時間帯で、「日本から」というとわざわざアナウンスで私のチャットでの発言を取り上げてくれたり、チャットを通じてちょっと会話したりして、非常に楽しい一刻を過ごせた。チャット・ロボットもよく喋る(人工無能の常で、ときに突拍子もないことを叫んだりするが、放送でとりあげられたミュージシャンのアルバム情報やライヴ予定などもアナウンスしたりして、相当高機能)し、ほかのリスナーたちもほとんどが気さくだ。

日本にも東京大仏TVのようにリアルタイムでインタラクティヴな放送をしているところがある。私も幾度か番組を拝見して、チャットも覗きながら随時放送内容が視聴者からの反応を織り込んで進むさまをとてもおもしろく感じた。Whole Wheat Radio はこれのラジオ・24時間版で、同局音楽ライブラリに収録されている曲が随時リクエストでき、チャットを通じてたまたま同じ時間帯にストリームを聴いているリスナーや放送の送り手と双方向でやりとりができる。それらを一括してコントロール可能なリスナーごとのコンソール画面というのは画期的だと思う。

とにかく楽しいところです。番組のトーク部分は英語だし、チャットも英語だが、チャットについては「どこに住んでる?」「そっちの天気どう?」「どんな音楽が好き?」「リクエストしてみる?」くらいのことが言えて答えられれば、少なくとも当初は楽しめる。音楽は好き好きだと思うが、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょう。

本稿のカテゴリは、流される音楽よりも局と番組制作のあり方を主に取り上げているため、「radio」とした。

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  • Whole Wheat Radio の肝腎のストリーミング聴取は、同局サイトの「Listen」のリンクから。現状で、同時聴取30人分のストリーム帯域が確保してある由。北米の夜の時間帯(日本の午前中から午後にかけて)はかなり混んでいる。

  • 〔2004年8月8日追記〕以下の WinAmp 関連の話題はすべて MS Windows プラットフォームでのことです。申し訳ありませんが、私自身は Mac およびその他の OS 上でのストリーミング聴取の経験がありません。〔追記終〕

    2系統のストリームがあり、ビットレイトは低速回線向けで24kb/s、広帯域高速接続向けでも56kb/sと音楽ストリームとしては低めだ。しかし WinAmp で mp3PRO プラグイン(リンク先は配布元)を今回初めて導入してみて、遅まきながらその威力に驚いた。低速接続向けでもFMラジオより若干劣る程度の、かなりいい音質で聴くことができる。

    導入は簡単。ダウンロードした .exe ファイルを実行すれば自動で適切なインストール先に解凍、いったん WinAmp を終了して再起動し、オプションでプラグインの設定(inputの項)で「THOMSON MP3PRO Decoder」を適宜調整(通常「すべてのmp3に適用する」をオンにすればいいようだ)。

  • なお、WinAmp といえば私は以前から Enhancer(現時点でヴァージョンは0.17のまま。リンク先は WinAmp 公式サイトのプラグイン検索結果)をずっと使っている。他の DSP(Digital Signal Processor)プラグインが、好みの音質を得るためには調整項目が多すぎて素人(の私)にはややこしかったり、また多くが相当 CPU 負荷が高くてシステム全体の負担になるのに対して、Enhancer はきわめて軽く、調整項目も少なめでしかも効果が高い。お薦めです。

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