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Carpenters を“大人買い”する

小学校高学年の頃、Carpenters の "Yesterday Once More" が大ヒットした。これがたぶん、自分が物心ついてから“洋楽”を意識した最初期の記憶だ。それ以前は、母親がふだん家で流しっぱなしにしていたAMラジオでこれまた一時期しつこいほどにくり返しかかっていた Beatles の "Let It Be" くらいしか憶えていない。ちょうど Beatles が解散を発表した時期の前後だったのだろう。

Carpenters は一度だけライヴも観た。子供たち(といっても、生徒会長を後に務めることになる優秀な友人と私の男2人組だったのだが)だけでコンサートに行くというので、課外のことなのにわざわざ学校の先生に許可をもらって出かけたのを憶えている。この兄妹デュオは、1970年代前半、ニッポン放送(当時は日本の中波帯もまだ10khz刻みで1240khzだった)で野沢那智さん進行の『カーペンターズ物語』(? 番組名は完全なうろ憶え)という週1度の帯番組が放送されるほど人気があり、私も毎週楽しみにこの番組を聴いていた。アメリカで制作されたものに日本語をかぶせていたと思うのだが、ときどき特に日本のファンへ向けた二人の肉声メッセージも流れた。私が観たライヴはヒット曲オンパレードというわけではなく、途中で元々ドラマーだった Karen Carpenter のドラム・ソロ、それにお得意のオールディーズや Burt Bacharach メドレーも挟んだ楽しいものだった。

先日 Amazon.co.jp で音楽CD1枚980円セールをやっていて、見るともなしにリストアップされたものを眺めていると、Carpenters のオリジナル・アルバムが何枚か含まれている。これまでも時々彼らの歌がラジオから流れると「ああ、そういえば子供の頃あんなに好きだったのに、結局アルバムは1枚も持っていなかったな」と思い出し、それでも長らく店頭で手にとってレジまで持っていく気にはならなかった。これも何かの縁かと、まとめて注文した。

今回購入したのは Ticket to Ride (1970) から Horizon (1975) までのスタジオ録音オリジナル・アルバム6枚。検索エンジン上位に挙がる Carpenters FAQ には、アルバムごと・曲ごとのエピソードも添えられていて、聴きながら読んでいろいろ懐かしかった。

“滅菌された”情感

改めて発表順に聴いてみる。どれもリマスタリングを施されたと銘打たれているものの、さすがに初期のアルバムの音は古い。古いが、コーラス部分の例の特徴的なハーモニィは最初のアルバムから顕著だし、Karen の歌はうますぎるくらいに破綻がない。彼らの全盛時代に「全米の一家に1枚は必ず Carpenters のLPがある」と噂された(もちろん誇張だろうが)その大元は、歌の内容が穏当で“健全”であることに加えて、Karen のアーティキュレィションの良さにあるという話を聞いたことがある。たしかに聴いていて歌詞の一語一句ほとんどが明瞭に伝わる。

美しい旋律と心地よいハーモニィ、巧みな編曲、エアプレイに最適の曲の長さ……彼らの音楽がきわめて良質のポップスであることは疑いもない。ただ、切ないラヴ・ソングもいま聴き返してみると、最後の最後でどこか物足りなさを感じる。なぜそう感じるのかちょっと考えてみたのだが、艶や色気、もっと端的に言えば生身のセクシュアルな要素が、Karen の歌声には全くといっていいほど欠落しているせいではないか、という気がする。

このことは、とくに Leon Russel が激情を込めつつ抑制を効かせてギリギリのところで歌った "A Song for You" や、Eagles の(ヴォーカル:Don Henry)"Desperado" といった優れた曲の元の演奏と、Carpenters によるカヴァとを聴き較べるとよくわかるように思う。兄妹デュオによる歌の完成度はむろん高いが、原曲の演奏がそれぞれ持っている独特の陰翳に満ちた世界とはほとんど別物だ。こう書いてしまえば別物になっていて当り前だ、何をいまさら、だ。しかしここで言いたいのは、Carpenters のヴァージョンがもつ、一種特異に“滅菌”されたような印象のことだ。

もう30年近くも昔、子供だった友人と私のコンサート行を学校の教師が許可した理由がこんなところにあるとも思えないが、この端正さ、歌われる恋情や孤独といった極めて個人的な感情までもがどこか作り物めいて理念化されたところが、無意識にせよ大人たちにはわかっていたのかもしれない……そんなことまで想像してしまった。

“イモさ加減”の根っこ

彼らを夢中で聴いていた当時、本稿冒頭の話ではないが、すでに Beatles のファンだった同級生から「カーペンターズは“イモ”だ」と言われたのを思い出す。子供だったその頃の自分には、どうしてそんなひどい言い方をされるのかさっぱり理解できなかった。それからいろんな音楽を聴くうち、なんとなくその同級生が何を言いたかったのかわかるような気がしている。生真面目さがひとつ。どこか最終的に垢抜けしきれないところが残っている(あるいは、意図的に残してある)のがひとつ。Carpenters の話題で Pink Floyd をもち出すのもどうかと自分でも思うが、前に拙記事で「イモさ加減も含めて Floyd を偏愛している」と書いた。自分の裡ではこの2つのグループはこの“イモさ加減”で通底している。要はおそらく聴き手たる自分がイモだからなのだろう。

〔04年7月18日追記〕上の段落末尾の一文、読み返してみると非常に誤解を招きやすい。彼らの音楽がイモだと断定しているわけではなく、また彼らの音楽を愛好する人たちが私同様にみなイモだと言いたいわけでも決してありません。彼らの音楽に“イモさ加減”を見出し、勝手に通底させているのはあくまで私自身の裡での話だ、というつもりです。〔04年7月18日追記終〕

どうもくさしたような書き振りになっているが、Carpenters で自分は“洋楽”に目覚めたのは間違いない。また、良質なポップスがもつ魅力への興味がいまでもそれなりに維持されているのも、彼らの音楽と出遭ったおかげだと思っている。もし万が一、彼らの大ファンで拙稿を読んで気分を害された方がいらしたらお詫びします。これでも私なりのオマージュなのです。

最後に。個人的に大好きで、ときどき無性に聴きたくなる Carpenters の曲:

  • "Bless the Beast and the Children"(邦題「動物と子供たちの歌」、A Song for You (1972) 所収)

  • Horizon (1975) の劈頭と掉尾を飾る、ほぼピアノとヴォーカルだけの静かな "Aurora""Eventide"

  • それに、たぶん "Rainy Days and Mondays"Carpenters (1971) 所収)

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  • 上掲「Carpenters FAQ」は、本文でふれたとおりエピソード多数。もちろん歌詞も読めるし、ディスコグラフィも(私が拝見した限りでは)おそらく網羅的。

  • 日本語では、佐々木実さんの「West Coast Rock」内、カーペンターズの項目が、とくにアルバム単位で聴く Carpenters について詳しい。ただし残念ながら、現時点では Now and Then (1973) まで。佐々木さんも書いておられるが、この兄妹デュオの“ベスト盤”は本当にどれも中途半端だ。

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