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Joni Mitchell: Travelogue

Candle Light ad Joni Mitchell

掲げた画像は、本アルバムにも収録されている1曲の以下の詩に寄せている:

  教会では人々がろうそくを灯す
  蝋は丸まって涙のように滴る
  希望と絶望がそこにはある
  私が30年にわたって見続けてきた
Joni Mitchell "Hejira" から

惚れた女

結婚したい女性がいる。それも年上で二人。どちらについて先に文章にしようか迷ったのだが、やはりここは本命のほうを(戦略を誤っているか?)。……というのは悪い冗談にしても(いや、けっこう本人は本気なのだが(笑))、この女性が作る音楽のいろんな意味での「水準の高さ」は、ほとんど他の追随を許さない気がする。

Bard

おそらく、Joni をいちばん正しく言い表すとすれば「歌う詩人(bard -- 女性形はない?)」ではないだろうか。彼女が歌う言葉は、ほとんどの楽曲の場合すでに「歌詞(lyrics)」ではなく「詩(poem)」だ。これは、歌詞と詩歌とのどちらの程度が高いかという問題ではなく、Joni の歌の言葉は、仮に歌われるものではなく読まれるものとしてそれのみで呈示されても、十分に鑑賞するに耐えるということだ。

「詩」を歌うという点では、たぶん Bob Dylan が対抗馬なのだろうが、残念ながら彼の特徴ある声質はそれなりに好きなものの、彼の音楽をきちんと聴いたことはほとんどない。

その「人でなし」Dylan との別れを歌った(らしい)Joan Baez の "Diamond and Rust" もすばらしい詩が哀切な音楽になって成立しているが、彼女も私自身はこの曲一曲以外はほとんど聴いたことがない。

標題に掲げたアルバム Travelogue は、Joni の最新作。最新とはいうものの、リリースはたしか2002年12月上旬で、もう1年以上前のもの。2枚組・全篇 Joni がこれまで発表した自作を、オーケストラに若干のジャズ系ミュージシャンを加えた大編成の楽団をバックに歌う。

"A Case of You"

実は、Joni はすでに前作 Both Sides Now (2000)で、全12曲のうち2曲だけだったが、オーケストラをバックに自作を歌う試みをしている。とくにA Case of You(原曲は名盤の呼び声高い Blue (1971)所収)は、まるで夕日が沈んで暗闇と太陽の残光が音もなくせめぎあっているかのような幽玄なオープニングから、同様に静謐な弦の響きを残すクロージングまで、オーケストラの編曲がすばらしい。Joni の、オリジナルの清純なハイトーンとは全く別種の、自らたどってきた人生の重みと味を感じさせる、深みをいや増した声で歌うヴォーカルも、アーティキュレーションを含めて非の打ち所がない。この詩を弱冠20代にして書いた Joni の才能恐るべし……。(おそらくこれは褒めすぎなのだろう。たぶん私はこの曲のこの演奏が、Joni のすべてのキャリアのなかでいちばん好きなのだ。)

この A Case of You があまりにも出色の出来映えだったので、新作 Travelogue には期待するところ大(待ちきれずに外盤ショップに入荷予定を問い合わせるほど)だった。Joni の若書きの傑作楽曲は、歌い直されたこの曲に顕著にみられるように、50代も末の、世の中の酸いも甘いも噛み分けた女になった彼女自身が歌ってこそ、さらに輝きを増す(にちがいない)……。

違和感

だが、私自身のこうした身勝手な思い入れに反して、いそいそと買い込んできたこのアルバムを頭から聴いていくうち、ちょっと違うぞ、という気がしてならない。前作同様、編曲も Joni のヴォーカルもすばらしいのだが、どこか空廻りしている印象を受ける。繰り返し聴いてもう1年近くになるが、いまだにそうした違和感は払拭できていない。当初は単純に2枚組全22曲という量に圧倒されているせいかとも考えていたのだが、それだけでもないようだ。

この「なんとなくしっくり来ない感じ」の正体を見極めようとしばらく足掻いたのだが、或る時点でそのバカらしさに気づいた。楽しめる曲だけ聴こう。結果、ベストトラックは The Circle Game (原曲は Ladies of the Canyon (1970))、次点に Hejira (同名アルバム (1976) 所収)、さらに、ホームレスについて歌った悲しい Cherokee LouiseNight Ride Home (1991))など、今はCD2枚目をもっぱら聴いている。

なお、自分が感じた違和感については、いささか参考になるアルバム評をみつけた。執筆者の Chris Jones がどういう人か、よくわからないのだが、評論の最後の段落でいう:

彼女がここ数年とっているスタンスは、「ジャズや西洋古典音楽といった、より古い形式のほうが、自らが現代の米国を切開し分析するための器 (vehicle) としてはより適切だ」とする口当たりのよいだけの(specious) ものだ

という指摘は、少なくとも部分的には正しいように思う。果して Joni 自身が上掲の評者が言うようなところまで思い上がってオーケストラを採用しているのかは疑問だが、聴き手側にそうした思いを抱かせる部分は、残念ながらこのアルバムにはいささかあるように思う。

新作?

このアルバム評にもあるとおり、Joni はここ数作、アルバムを発表するたびに「今回が最後で、もう音楽産業とつきあうのはうんざりだから、アルバムは作らない」と公言している。しかし個人的には、アコースティック・ギター一本から始まり、ジャズミュージシャンのコンボを従え、次いで電気楽器と計算機を音作りに多用した「同時代」風の音作りを経て、オーケストラの音を自家薬籠中のものにした Joni は、きっとまた新たな音楽を作って自分の詩を歌わざるをえなくなるに違いない……と信じている。

それで……あまり若くないですが、東洋の神秘を少しは知るところのあるツバメを飼う気になってもらえませんか、Joni-san...(笑)

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  • Nonesuchレーベルの公式サイト(要広帯域・要Flash入口)。

    たしか Nonesuch はいわゆる「民俗音楽」(非西洋古典音楽)のコレクションなど、かなりユニークな方針で運営されてきた、営利的色彩の極めて薄いレーベル。Joni がこのレーベルへ移籍したのもわかる気がする。ただ、相当の時間と人手(つまりは金)を要したに違いないこのアルバムの制作費の元が取れるほど、売行が良好とも思えないので、共倒れ(?)にならないことを祈る。

  • Joniの公式サイト JoniMitchell.com, フレイム版トップページ。Joni の力作バイオグラフィ執筆継続中。(一度 E-mail で連絡したら、サイトのメインテナ(?)Jimさんが気さくに返事をくれた)

  • 上掲の公式サイトとともに、たぶん Joni に関する Web 上で最も網羅的なリソース The Joni Mitchell Discussion List(JMDL) 公式サイト。ここのメイリングリストは内容も濃く議論も活発で、一度購読しようかと思ったのだが、トラフィックが多くついていけそうにないので断念した。アーカイヴされているので後追いでなら読むことは可能。

  • 〔04年03月23日追記〕最近 JT の喫煙マナー広告で Both Sides[,] Now が使われているためか、検索でこの曲の歌詞を探して本稿に直接訪れてくださる方がいらっしゃるようです。上掲の2つのサイトいずれにも歌詞は掲載されていますが、どちらかというと歌詞検索機能が提供されている JMDL のほうが使いやすいと思います。同サイト左側フレームの「Lyrics」からたどれます。

  • 画像はこちらのフリー写真素材サイトから頂戴した。撮影者は Scrapman さん(ご本人のウェブサイトはこちら。錆びたスクラップについてのサイトです

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