Supertramp と人形
ルーディは行き先のない列車に乗っている 旅の途中だ 彼は到着したくないんだ まだ猶予が要るからSupertramp "Rudy" から
人形作家・浜いさを氏の年譜、1976年の項目に「NHKテレビ ヤング・ミュージックショウ『スーパー・トランプショウ』で人形作品20点ライブ参加」とある。思わず納得した。
共演する人形たち
映像のディレクションのうまさも与っていたのだろうが、浜さんの年譜に出てくるこの番組を見てから30年近い時間が経過しているにもかかわらず、Supertramp の演奏と、バンドと「共演」した人形たちのこととは、ふたつながらに強く記憶に残っている。それほどこれらの人形たちの存在感は際立っていた。
NHK総合TV「ヤング・ミュージック・ショー」
ウェブでざっと検索しただけでも、NHK総合TVが放送した「ヤング・ミュージック・ショー」への言及はそれなりに見つかる(最も手際よくまとまった概略はここか? 1971年開始1986年終了で130回放送、80のバンドが登場したとのこと。この記述にある同番組「プログラム・ディレクター」波田野紘一郎さんのより詳しい職歴はここ。)
Rolling Stones から Earth Wind and Fire、甲斐バンドまでが放映された(日本のミュージシャンが出ていたのは、今回検索してみて初めて知った)ようだが、帯番組として定期的にオンエアされていたわけではなく、海外制作の既存の番組(ほとんどライヴ演奏の映像?)を買い付けてそのまま放映したものが多かったような記憶がある。もっとも、エアタイムは不定期どころかほとんどゲリラ的と言うべきで、残念ながら多くの番組を見逃してしまった。私が Supertramp を観られたのは、ほとんど偶然だったのだと思う。
日本制作のスタジオ・ライヴ
「ヤング・ミュージック・ショー」の Supertramp の回は、珍しく国内制作。しかも予めセットアップされた公演を映像に収めて編集したものではなく、(たぶん NHK 東京・渋谷の)TVスタジオに若干の数の聴衆を入れ、バンドが生演奏する様をきちんと捉えていた。
「共演する人形たち」は、このスタジオ・ライヴを映像化するなかで使われていた。カメラは、時に演奏しているバンドのメンバーをクローズアップし、時にスタジオ内の様々な位置に据え付けられた台の上に佇む人形ににじり寄っていく。バンドやMC(司会者はこの回にはいなかったように思う)による喋りはたしかほぼ皆無で、こうした映像の背後には常に Supertramp の音楽が流れていた。
文楽人形、あるいは Thunderbirds の SuperMarionation の人形と違って、顔の表情を変えることが(でき)ないこれらの人形たちは、それでも音楽を背景に、あるいは音楽とともにさまざまな表情を湛えていた。
Breakfast in America 以前の Supertramp
1979年リリースのアルバム6作目 Breakfast in America の世界的なヒットのために、売れ筋狙いのポップロック・バンドと認識していた/している人たちは案外多いかもしれない。しかし3枚目 Crime of the Century から爆発的に売れた6作目に至るまで、彼らの基本路線はほとんど変わっていない、と個人的には考えている。技巧や派手さに走らない音作り、同時代のさまざまな事柄へ十全に目配りしてシニカルに書き込まれた歌詞、そしてバンドとしてのまとまりがかっちりとしていること。
「ヤング・ミュージック・ショー」スタジオライヴでの彼らは、たしか "Babaji" (Even in the Quietest Moments (1977) 所収。個人的にはこのアルバムと上でふれた3枚目とが甲乙つけがたい)を演奏していた。番組の放映年時が1976年だったとすれば、アルバム制作中あるいはその前にすでにそのレパートリをライヴで披露していたのだろう。
ロックバンドには珍しく木管(とくにクラリネット)を実に効果的に使っていたこと、"Hide in Your Shell" での切々としたヴォーカル、たぶん彼らの最高傑作 "School" での映像の短いカット割りの連続と動きの多いライティング、などを今でも思い出すことができる。
ありきたりだが、無言の雄弁
そして物言わぬ人形たち。こうして好きなバンドのひとつにまつわる、印象深いことを書きとめておこうと思い立ち、漠然と辻村ジュサブローさん作かと思っていた「彼ら・彼女たち」が、ちょっと調べるだけで浜いさを氏という作家の作品群であったことがわかったのは、自分にとっては収穫だった。長年にわたり、折にふれて思い出しては出自が未詳だったせいで何となく居心地が悪そうだった人形たちが、これで自分の裡でようやく落ち着き所を得たような気がする。
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〔04年12月19日追記〕 その後、本稿で参照している浜いさを美術館(リンク先は同館本来のエントランス頁)主宰の Anne Boleyn Art Gallery 管理者様から、コメントをお寄せいただいた。
本稿はウェブ上で自分が書いたものを公開し始めた今年2004年のごく初期のもの(公開以前に何本か書いてみたため実質的な1本めだったかどうか判然としないが、ご覧のとおり公開したのはこれが一番最初だった)で……というのは言い訳にもなっていない。リンクを拙稿から張らせていただく際、正式に許可を得ないままこうして1年近く公開してきた。「リンクは自由に」とは明記されていない以上、本来こちらから公開以前に許諾をお願いすべきであったにもかかわらず、今回コメントを寄せていただき、別途メールにてお詫びと改めて許可をお願い申し上げたところ、ご快諾いただいた。改めて失礼の段をお詫びし、また事後承諾にもかかわらず快く許可をくださったことに対して、本稿でも重ねて御礼申し上げる次第です。ありがとうございました。
またその際、以下の注で画像は無断拝借できない(のでしていない)旨書いていることに関しても、とくに許可をいただいた。本稿に掲げるのがいちばんふさわしいのかもしれないが、できればしばらく時間を頂戴して、また稿を改めて浜いさをさんの手に成るこの印象的な人形たちについては書きたいと思う旨、返信申し上げた。
いずれにせよ、検索エンジンなどを経由してこの拙稿をお読みいただいた方には、「浜いさを美術館」を訪問されるよう、重ねてお勧めしたい。〔04年12月19日追記終〕
浜いさを美術館。Supertramp のスタジオライブに「参加」していた人形たちは、制作年代から見ても自分の記憶のなかの影像と比べても、「作品展示」のページの1976年の作品によく似た作風だったと思う。
The Supertramp and Roger Hodgeson Chronicles。バンドに関する、ウェブ上の決定版リソースか?
画像のオリジナルはwebinistaさん撮影。いつものサイトから頂戴した。リンク集に記載しておこう。
浜いさを氏の作品の画像を拝借して掲示したいと思ったのだが、万が一権利関係にややこしいことがあると煩わしいので、興味をお持ちの向きは上掲リンクをぜひ参照されたい。
〔04年12月19日追記〕……と本稿公開当初書いていたが、本文追記に記したとおりです。
〔04年5月3日追記〕本稿公開後、下記のリソースがウェブ上にあることを知った。この「ヤング・ミュージック・ショー」の放映ミュージシャン/バンドのリストを、えねま亭(サイト・トップ)で、えねまさんが「YOUNG MUSIC SHOW LIST」として公開しておられる。ぜひ。
また、昨夜(04年5月2日)23時10分からNHK総合TVの「NHKアーカイブス」枠で27年ぶりに放映された「ヤング・ミュージック・ショー」 KISS 初来日の武道館ライヴについては、雑感を別稿で記した。よろしければご笑読ください。