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死後に(も)語りかける寺山修司

ことさら奇を衒った標題をつけようと思ったわけでは無論ない。また昔話になってしまうのだが、実際にこういうことがあった。

寺山修司は1983年5月(こうして改めて書くと『われに五月を』の「五月」だったのか……いや、そういえば亡くなった直後の追悼文の類で、この点にふれたものを多数読んだ気がする)に亡くなっている。たぶんスポンサー契約の関係だろう。寺山の生前からオンエアされていた(と記憶している)寺山出演のCMが、逝去の後もしばらくの間放送されていた。FMでたしか週末の夜のわりと遅い時間に、生前の寺山の声がラジオのスピーカから流れる。

ウェブを検索したところ、このCMは全日本シーエム放送連盟(ACC)から1984年度に受賞(グランプリを、だろうか? ACC公式サイトの「パーマネントコレクション CM作品集(ラジオ)」ページに明記なし)し、1993年に「殿堂入り」しているそうだ。題名「寺山修司(色と音)」とリストされている。

もっともあらゆる賞には裏があるし、このCMの出稿側がソニー、企画制作は電通(とランダムハウス)とくれば、受賞云々はどうでもいい。しかし、なにがしかの実質を具えたものであったことの傍証にはなっているだろう。

そう、たしかに「色と音」というタイトルがふさわしい。60秒か90秒、あるいはもっと長めの尺があったものか、何本かで一群を成すCMだった。寺山が比較的オンマイクで、あの特徴的な、あまり大きく口を開けない感じの声で静かに語る。光を失った盲学校の子供たちに、ピンポン球が跳ねる音や絹糸を弾く(?)音を聴いてもらい、その音がどんな色だと思うか尋ねてみる……そんな話だった。CM放送当時、生半可ではない意気込みで小説家を目指していた寺山好きの友人がこのCMについて知らず、こんなのをやっているよと話した時には、当然細部まで内容をはっきり憶えていた。問いかけられた子供たちの無邪気な、しかし聴いているこちらの意表をつく答(実際の子供たちの声が入った)と、それを引き出した寺山の目のつけどころの鋭さに感心したのも憶えている。だがさすがに20年以上も経つと、ほとんど忘れている(ことに茫然とする)。

夜の暗がりのなかで死んだ寺山の声が淡々と聞こえてくると、ひょっとしたら寺山はまだ亡くなっていないのではないかと思った、そんな話を友人にした。いまも強い印象が残っているのは、既に亡くなっていたにもかかわらず、冥界と現実とのはざまよりもややこちら側に近いところにいて語りかけてくるような、不思議な感覚だ。FMで聴く人声は、その人が自分の言葉で語っているかぎりは決して上滑りせず、AMに較べて音質がましな分、かえって妙に生々しい。寺山の体が強くないことは周知だったが、亡くなったのにはかなり「そんなに急に」という印象をもった。その後このラジオCMを聴いてみた友人も、なんとも不思議な感じがするなと言っていた。

残念ながら、生前の寺山に会ったりすれ違ったりしたことはない。寺山の映画作品から入り、天井桟敷の『レミング』公演を観て完全に虜になってしまった別の友人がいたが、彼は劇場で寺山を見ているかもしれない(今度会ったら訊いてみよう)。歿後4、5年経ってから、某所で寺山よりひと世代くらい上の歌人の講演を拝聴した。会がはねた後の飲み屋で、短歌に興味があるかと問われておずおずと「寺山(とあと数人の戦後歌人の名前を挙げた)の短歌を読んでいます」とお話したところ、その方は、歌人デビュー直後の寺山に会ったことがある、歌壇は当時から賛否両論だったが、本当に純粋で才能豊かな人だった、とおっしゃっていた。私は、もし会えるものなら会ってみたかっただろうか……寺山についてはよくわからない。

どうしてこんな話ばかり書いているのか? 自分でもよくわかりません。現在に到るまで、自分が多大な影響や感銘を受けた人たち、作品、印象的な出来事などについて書いているつもりなのですが、果たしてこれを「本(books)」のカテゴリにまとめていいものか(苦笑)。まあ、いいか……。

追記とお詫び

〔2007年2月12日追記〕 上掲、1番目の小字組注記で「あらゆる賞には裏がある」云々と書いている。一般論として、いかなる賞もその“権威”は、世間がそこに仮託する水準より実際にははるかに低い、つまり賞はほとんどの場合なんら“正当な”評価を反映していない、というのが私の見方だ。本エントリを書いた当時調べてみて知った、このCMの受賞に関しても、いささか揶揄する気持ちがあり、自分が浮かべた軽い冷笑を当然のもののように思っていた。「ソニー・電通は紛うことなき大企業。また、商業メディアがスポンサーや広告代理店の意向に(最大限抑えた表現で言えば)「気を遣う」のはあたりまえ。それに、どんな賞であれCMの受賞は世間の関心を惹く可能性を増し、媒体の露出と広告としての効果をさらに上げるいい機会だ。だから……」。大して実態を知らないにもかかわらず、そんなふうに邪推していた。

いま書いたとおり、私は斯界の実情をほとんど知らない。授賞する側の全日本シーエム放送連盟(ACC)のウェブサイトで、この非営利社団法人の成立ちなどを改めて読んでみたが、スポンサー・メディア・広告代理店の関連業界団体が合同で作ったものである由。あくまで外側から眺めたかぎりでの話だが、まさに利害(大仰か)当事者の寄り合い所帯とも言えるし、三者の綱の引き合いでそれなりに客観性が担保されているのかもしれないとも思える。正直、今でもよくわからない。

ただし、念のため付言しておくと、注記後段で「なにがしかの実質を具えた」云々と書いたとおり、要はこのCMは非常に優れた“作品”であり、受賞云々は枝葉末節とみなすべきだろうと言いたかった。

それはそれとして、3年近くも前に書いたものに、なぜ今頃になってこんな追記を連ねているかと言えば、つい数日前、この駄文に新たにリンクを張ってくださった方がいらっしゃることに気づいたためだ。NEWS@ランダム「「ランダムハウス」&「ラジオCM」ということで」という記事がそれで、このウェブログが、当の寺山のCMを制作した(そしてパーレン内ながら、拙注記でも社名を挙げている)ランダムハウスというところのウェブサイトに組み込まれている。同社は、「ラジオCMといえばラジオ局や広告代理店が直接制作するのが普通だった時代に、他に類を見ないラジオCMのスペシャリスト集団としてスタート。設立当初から従来の常識をくつがえす数々のラジオCMを制作」(同社サイト「HISTORY & AWARDS」より)とのこと。

ところが、この駄文を書いた当時、私は「ランダムハウスはきっと、同名の英語圏大手出版社関連、外資系子会社に違いなかろう(≒大資本がらみで有形無形の影響力も強いことだろう)」と無根拠に思い込んでいた。周知のソニーや電通についてわざわざ調べることをしなかったのと同様に、この会社に関することも確認する手間を一切かけなかった。サイトを拝見するかぎりでは、系列云々は事実誤認かもしれず、また当時の私の思い込みはやはり短絡的に過ぎるだろう。

同社サイトの記述から想像されるように、そして寺山出演のCMがなにより端的に示していたとおり、ランダムハウスはきっと、映像抜きの音でしか為しえないユニークな表現を志向する企画力をもち、それを具体化する演出力や音響技術を具えた、卓越した制作集団なのだろう。そうであればなおさら、上掲拙文に誤解を招く表現として露呈している自分の短慮には恥じ入るしかない。こうして追記して、ランダムハウス社関係各位に対し、失礼の段をお詫び申し上げる次第です。〔2007年2月12日追記終〕

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  • 上のネタになっている最晩年の寺山修司出演ラジオCMについて、詳細をご記憶の方がいらっしゃいましたら、ぜひお知らせくださればありがたく存じます。比較的最近、どこからたどったものか、このCMの寺山にふれた記述のあるサイトを訪問したのですが、ブックマークしておくのをうっかり忘れてしまい、今回改めて検索して結局みつけられませんでした。

  • 寺山修司に関するウェブサイトを2つ。TERAYAMA WORLD 寺山修司 鉛筆のドラキュラ。誠に失礼ながらこうしてご紹介する私自身はまだ全篇を拝見していないが、力が漲っています。

  • 鮎川想さんの寺山修司の世界。トップページには「寺山修司の著作は膨大で、亡くなった後の評伝、作家論の著作も多い。インターネットでも関連サイトは充実している。あえて重複を避ける意味で、ここでは「寺山修司断章」と題して、雑誌、新聞の中に登場する寺山修司に関する断片的な記述を拾い集めてみようと思う」とある。昨年は寺山没後20年で、意識的に寺山についての言及を探していたわけでもない私でも、彼を回顧する文章をいくつか目にした。貴重なクリッピングが読めます。

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本の忘備録 負け犬の栄光~寺山修司が駆けた60年代~
寺山修司「負け犬の栄光」1960年代にスポーツ紙・週刊誌等に書いたルポ、エッセーを1999年に収録したもの。氏の文章を読んだのはかなり久しぶりで中学時代以来かもしれない。当時は、なんだろう、あまり感銘を受けた記憶はなく、どちらかといえば意外とあっさり通り過ぎた記
from Higashi Ginza Sweet Life | at 14:33 on 2005/11/06 |
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