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mp3 ストリーミング: Iridian Radio と Postclassic Radio

記事にするところまでなかなか到らないのだが、相変わらず気が向くとストリーミングを渉猟している。今回とりあげるのは、いわゆる“現代音楽”中心のユニークな選曲を誇る2局。いずれも、音声ストリーミングのサービス・プロヴァイダ Live365 を利用しており、聴取には同サイトでの(無料)アカウント取得が必要。

Live365 の無料アカウントには、一本調子で煩わしいCMが流れるほか、時間帯によっては一部の局の聴取ができなくなるなど、若干の制限がある。しかし、既に利用しておられる向きはご存じと思うが、とりあえず聴いてみる程度から長時間の聴取まで、(番組の流れを台無しにしてしまうCMを無視すれば……タダより高いものはないの実例か(笑))支障はほとんどない。

〔備忘: “現代音楽”については、とりあえず Wikipedia 日本語版の当該項(たいへん意欲的な記述だが、内容の当否は私には判断不能)、また Wikipedia 英語版 contemporary classical music の項も参考に〕

Iridian Radio

1局めは Iridian Radio(リンク先は公式サイト)。トップ頁には、Phillip GlassSteve ReichTerry Riley といった、私でも名前だけは聞いたことがある著名な作曲家(といっても、ミニマリズムの傾向が強い人の作品ばかりというわけでもないが)、また Meredith MonkLaurie Anderson を始めとする作曲家兼パフォーマー、さらには Tom Waits(→関連拙稿)や Frank Zappa など、番組のなかで頻繁に流れる作曲家・演奏家たちが列挙されている(ただし、現行プログラムを聴くかぎりでは、このトップ頁での紹介は網羅的ではない)。同局を主宰しているのは、自身も作曲家・ヴァイオリニストの Robin Cox さん(リンク先は同氏のアンサンブル公式サイト)。

選曲は、かなり尖鋭的(というよりもむしろ“痙攣的”というべきか)な印象を受ける。自分が耳慣れないせいもあるのか、聴き手の注意力を半ば強引に向けさせるような“辛め”の曲が多いように思う。作品は20世紀後半以降に活躍している音楽家のものがほとんどのようだ(その意味では文字通りの“同時代”音楽とも言える)。曲の長短もまちまちで、僅か1、2分の激しい曲が何曲か続いた後、たとえば Glass 作曲の、反復の多い弦楽四重奏曲が20分以上にわたって流れたりする。また、リズムのおもしろさや変化を主眼にして書かれたパーカッシヴな曲の演奏もしばしばかかる。このため、聴きやすさという点ではちょっとしんどい。単に聴き流すという聴き方はしにくく、私などは1時間も続けて聴いていると気疲れしてしまう。

それでも(やや余談めくが)、Iridian Radio ではたとえば Kronos Quartet による演奏が多数流れる。ド素人の私が今さらこんなことを言うまでもないのだろうが、彼らの演奏がもつ爽快なまでの切れ味の良さには、耳を傾けていて一再ならず驚かされた。そんな発見もある。

Postclassic Radio

Iridian Radio に関するウェブ上の記述を探していたら、芋蔓式に Postclassic Radio(リンク先は Live365 内の同局ページ)にたどり着いた。こちらを主宰するのは、Kyle Gann さん。同氏は Iridian Radio の Robin Cox さんと同じく、米国の作曲家(また音楽批評家)の由。それよりも個人的に驚いたのは、Gann さんが、以前シリーズ冒頭の数回分を非常に興味深く聴いた(が、遺憾ながらその後まだ全篇を通して聴くことができていない)ラジオ番組 American Mavericks のナレィション原稿を書いた方だったことだ。

再び脱線するが――この American Mavericks は、各回60分、全13回から成る近現代(の)音楽史探訪シリーズ。元は米国の公共放送ラジオ局で放送されたもの(のため、すべて英語なのは残念)。19世紀の終わり頃を起点に、そもそも統一的な国家イメージを建国後200年を経て今なお欠いているアメリカという国が、欧州を本拠とするいわゆる“クラシック”音楽の流れから“独立”し、アメリカ固有のユニークな音楽を確立していく過程を描く(もののようだ――全篇未聴のため)。シリーズ標題に言う「はぐれ牧牛(mavericks)」は、西洋古典音楽の主流たるヨーロッパから地理的にも文化的にも離れた米国(の音楽と音楽家たち)を表している。数回分を聴いたかぎりでは、数多くの作曲家の曲の実演やインタヴュウなど豊富な一次音源を含む、実によくできたシリーズで、演奏される音楽だけを拾っても興味深く聴ける。未聴の方にはオン・ディマンドで提供されているアーカイヴ聴取をぜひお勧めしたい(そして、早く最後まで聴こう > 自分)。また、シリーズ公式サイト(上掲)では、Gann 氏執筆の原稿(ページ下方、「Read」の「Essays by music critic and author Kyle Gann」。ただし番組中での実際の語りとは、細部で異なっている箇所もある)を読むことも、演奏・インタヴュウのみを抜粋して聴くこともできる。(さらには、2系統のストリーミング番組もある)

このユニークな番組については、できれば別稿を期したい(と、上掲のシリーズ公式サイトの存在を知ってからずっと考えているのだが、なかなか果たせない)。

さて、Postclassic Radio の選曲は、Iridian Radio と比較した場合、個人的にはもう少し聴きやすいように思う。Gann さんのウェブサイトで公開されているプレイリスト(過去の番組分も含む)を見ても、たとえば Harold Budd や Brian Eno(→関連拙稿12)のアンビエント作品や、時代を20世紀前半に遡って Eric Satie の作品も選曲されている。インストゥルメンティションの点で、ギターや電子楽器など、いわゆる“ポピュラー音楽”で耳になじんだ楽器が加わった編成の作品も多い。演奏時間も、だいたい5、6分から10分程度の比較的まとまりのよい長さの曲がつながっている感じだ。

今回の“芋蔓”

本稿を書くにあたり Iridian Radio から Postclassic Radio への“芋蔓”になったのは、この2局が2004年に同時に受賞した ASCAP-Deems Taylor Award(「Internet」部門)に関する言及だった。検索エンジンから、以前の拙稿(→上掲拙稿1)でも参照したことがある、主にインターネットを通じた放送に関する情報を扱う RAIN(Radio And Internet Newsletter)所掲の昨年(2004年)11月12日付記事「Internet stations going to edges of classical music exploration」(この記事自体は、Los Angels Times 紙初出(?)のようだ)を読みにいって、Postclassic Radio について知った。奇しくも、この記事中のインタヴュウで、Cox・Gann 両氏ともに「既存のクラシック音楽局は商業主義に毒されていて、自分が聴きたい曲〔この場合は“現代音楽”〕がまったくといっていいほど聴けない」ので、自前でストリーミングを始めた旨を語っている。

どちらの局がよりお薦めというわけではない。私自身は、この2つのユニークなストリーミングの存在を知り、或る程度まとまった時間その番組を聴くようになってから、実はさほど時日を経ていない。“現代音楽”は、日本でも、たとえば NHK FM のクラシック番組(印象としては、それなりに時間を割いているとは思うのだが)で紹介されるもの以外は、自分で音盤を探して買って聴くというような接し方しか成り立ちにくいのが現状であるように思う。上掲2局は、そうした状況を少しは改善してくれるのではないだろうか。

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  • 今回検索したところ、「新しい音楽との出会いを求めて:世界中のインターネットラジオを楽しみつくすブログ」 Net Radio Station、05年1月12日付 「Iridian Radio」という記事で、すでに Iridian Radio についての(上掲の拙文よりはるかにわかりやすい)紹介がされていた(深美智彦さん執筆)。同ウェブログは、ほかにも Live365(無数に局があって、個人的には探しづらさを感じる)内のものを中心に多数のストリーミング局が紹介されている。しばらく更新が止まっているのが残念だが、興味をお持ちの方はぜひご一読を。

  • いわゆる“現代音楽”について、私自身はその歴史から作曲家や個別の作品にいたるまで、未詳としか言いようがない。Kompf さんのウェブログ 快楽原則 では今夏、「作曲家サイト集 Vol.1」(05年7月12日付)・「作曲家サイト集 Vol.2」(05年7月21日付)にて、19世紀末以降に生まれ主に20世紀初頭以降に活躍した作曲家(欧州および北米)に関するウェブサイトがまとめられている。造詣の深い Kompf さんの評言も付されていて、私は随時参照して裨益されるところ甚だ大きい。こちらもぜひ。

    なお、本稿本文で「American Mavericks」シリーズに言及した部分は、Kompf さんの上掲「作曲家サイト集 Vol.2」コメント欄で私が書いた物のほぼ敷き写しです。今年の夏にまとめて聴くつもりがいまだ果たせておらず、ここでもこの正月休みに聴く……とは言わないことにしました(苦笑)。

  • そもそもどういう経路で Iridian Radio を知り、時々聴くようになったのか、実はこれまたはっきり思い出せない。英文だが、常々興味深く(記事によっては爆笑しながら)拝読している M Keiser さんのウェブログ Music in a suburban scene のブログロールから飛んだ先で遭遇したような朧ろ気な記憶があるのだが……。同氏はつい先日の12月20日付記事で、Iridian Radio を夢中になって聴いた旨を記しておられる。

…………

末尾ながら、年の瀬なので一言口上を申し上げます。

このウェブログも、開始からほぼ2年を経過しました。2年目の今年はどんどん更新頻度が落ち、ほぼ月刊状態になってしまいました。また、何分にも書き手たる私自身の興味関心がすべてに優先して話題が偏り、偏りつつも(偏るが故に?)菲才の及ばぬままダラダラと書くというあり方には、悪乗りを自ら感じるほど拍車がかかったような気がします。こうした数々の不出来にもかかわらず、たびたび訪問くださって拙文に目を通していただいた皆様に、この機会を借りて改めて御礼申し上げます。

あと2日足らずで迎える2006年が、どうかよい年でありますよう。

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